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主婦の「もったいない」が地域を救う!?                                  ~特産品「ゆず」を利用した取組み~(和歌山県古座川町)

1.はじめに

「地域を盛り上げるために、何か新しいことができないか。…人もお金もないけれど。」

 産業衰退に悩む地方都市で、そう考えてらっしゃる方は多いのではないでしょうか。今回はそのような方に是非知っていただきたい取組みです。和歌山県古座川町平井地区の取組みは、主婦目線の「もったいない」が、地域の特産品「ゆず」の生産事業を、一躍古座川町を代表する産業にまで押し上げた事例です。
 若い人が居なくても、お金が無くても、できるんです。最後までページはそのままで!

2.古座川町平井地区とは

古座川町平井地区の位置

 紀伊半島南部の山間部に位置する古座川町は、県内で最も大きい町であり、域内の9割以上が山林という自然に囲まれた町です。町に流れる清流古座川や特別天然記念物の「一枚岩」など豊かな自然が魅力ですが、平地が少ないこともあり、県内で2番目に人口が少ない町でもあります。
 今回取り上げる平井地区は、そんな中でもひときわ山深い小さな集落で、総戸数75戸、人口は117人(平成28年4月1日時点)、高齢化が進む古座川町の中でも、高齢化率が比較的高い地域です。
 産業としては、昔から林業が中心でしたが、この地域の郷土料理である「さんま寿司」に欠かせない食材だった「ゆず」の栽培が徐々に広がり、昭和51年には生産組合を結成するなど、「ゆず」の生産を本格化させていきました。

3.新たな取組みの契機と進展

ゆず 

 そのような状況の中、生産規模の拡大によりゆず酢の販売が増えた反面、集落の田畑には果汁を絞った後の皮が、大量に廃棄されるようになります。その光景を目の当たりにした生産農家の主婦はこう思いました。
「もったいない。何とかこれを活かせないか」
この思いが、やがて農家の問題認識として拡がり、昭和60年、ゆず農家の女性20人で「古座川ゆず平井婦人部」を結成します。まずは、皆でお金を出し合ってコンロや鍋を購入して、皮を使ったジャムやマーマレード作りから始めました。
その後、取組みは順調に拡大し、売上が年間6,000万円に達するまでになりました。
 しかし、その頃には、取組みを支えていた構成員の高齢化が進んだことがきっかけとなり、今後の更なる事業拡大と雇用確保、生産者の農地経営の安定化、担い手の世代交代を目指し、法人化を検討することとなりました。普通であれば、色々な反対意見などが出て、皆で行動に移すことはハードルが高いかもしれませんが、平井地区では、林業の運営で培われた「皆で協力して何かをする」という考え方が強く根付いている事もこの取組みを後押ししました。そして、他の地域団体や古座川町などの関係者を交えた会議などを経て、平成16年農事組合法人「古座川ゆず平井の里」として新たにスタートしました。同法人では、ゆずの価格安定化やU・Iターンの若者の雇用受入れなど、大きく活動の幅を広げ、売上高も年間1億円を超える(平成27年度実績)までに成長したのです。

4.これまでの取組み状況

「古座川ゆず平井の里」の皆さん。年齢なんて関係ない!

 現在、出資者である組合員は89名、地区内でも約70名と地域を大きく巻き込んだ活動を展開しています。また、組合の常勤従業員は8名、作業補助のパート・アルバイト込みで21名となっています。従業員の高齢化が進んでいるため、定年は設けておらず、「朝からは診療所、昼から4時間だけ入って貰うなど、地区の人たち総動員で手伝って貰っています。『もう働きたくない』という人もいますが(笑)、“生きがい”として何とかやって貰えるようお願いしています。」(統括責任者倉岡氏)
と柔軟に対応し、また、子育て中の主婦も勤務時間に配慮し、相互応援を心がけるなど、従業員自身やその家族を最優先に考えて、皆に無理のない働き方を提案しています。なお、同組合の前身が婦人部ということもあり、現在も組合員の6割超が女性で、商品開発や販路開拓等多くの取組みの中心となって活躍しています。
 商品販売については、当初のジャムやマーマレードだけではなく、ジュース、ゼリー、アイス、ぽん酢などの商品、さらには地域の農産物を取り入れた味噌や佃煮など多彩な商品を取り揃えています。取引先は大手ファーストフードチェーンやスーパー等のほか、ネット販売等も積極的に展開しています。
 また、廃校となった小学校の一部を利用した体験交流施設「ゆずの学校」を設置し、マーマレードなどの製造体験やレストラン、物販など外部と地元の交流の場としています。施設改修においては、県や町役場とも連携して、補助金等を活用して実施しました。
 そのほかにも、原材料の確保や集落維持のため、離農者のゆず園の一時預かりを行ったり、就農希望者への預かった農地の斡旋も行っています。また、高齢化などで人手の足りない農家への収穫ボランティア受入れの仲介なども行っています。

多彩な商品ラインナップ

体験交流施設「ゆずの学校」

5.今後の展望

「感謝祭」のようす(パン食い競争)

 今後、本業の商品販売については、まだゆずに利用可能な部位が残っているため、更なる商品開発を進めると共に、収益性の高い一般向け販売を伸ばすためにネットやカタログ販売を強化させるなど、意欲的に取り組んでいく予定です。ただし、高齢化などで人員確保や原材料確保が難しくなっている状況があるため、「無理のない取組み」となるよう、身の丈にあった範囲での事業拡大を目指しています。
 また、それ以外の活動としては、皆が元気に笑顔で暮らせる町となるよう、原材料の価格の安定だけでなく、高齢化している地域の人たちの暮らしや、古座川の自然環境についての取組みも始まっています。年に一度の「感謝祭」では、地域のお年寄りや平井の里を応援してくれるファンの方が毎年心待ちにしているような「運動会」などのイベントの実施や、日本みつばちと森を守る取組みなども行っています。更には、地域の人口減少に歯止めを掛けるべく、周辺地域との連携も模索し始めています。
 これらの取組みは、農家の主婦達の「もったいないから、何とかしたい」で始まった地道な取組みでしたが、地域が一体となって産業創出に取り組むこととなった成功事例です。皆さんの中には「うちは人が少ないからできない」とか「特産品が少ないからできない」と考える方もいらっしゃるかもしれません。筆者もそう考えていた1人ですが、古座川ゆず平井の里の代表理事羽山氏は言います。「何かやろうとする時は、皆『どうしたら地区として生き残れるか、仕事を作れるか、今いる人で誰が何をできるか、今ある環境でどう実現できるか』を考える。」そうした考え方ができれば、普通であれば見落とされるような、些細な思いつきを大きな取組みへと昇華させていくことができるのかもしれません。
 貴方の近くに「もったいない」はありませんか?
【関係先リンク】古座川ゆず平井の里: http://www.yuzusato.jp/index.html

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