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地域おこしの中心に「芸術」あり(和歌山県紀美野町)

1. はじめに

 「地域おこし」といえば、皆さんはどのような活動を思い浮かべますか?ゆるキャラやB級グルメを作って…というようなイメージを持たれる方が多いのではないでしょうか。
 今回取り上げる「紀美野町真国(まくに)地区」の地域おこしは、他の取組みとはひと味違います。それは「芸術」を中心とした取組みなんです。…何だか気になってきませんか?「芸術ってどんなことをするの?」「なぜ芸術なの?」皆さんのそのような疑問にこの後答えていきますので、是非最後まで読み進めていただければ幸いです。

2. 紀美野町真国地区とは

紀美野町真国地区の位置

 紀美野町は、和歌山県北部に位置し、2006年に旧野上町と旧美里町が合併して誕生した町です。中央を東から西に紀ノ川の支流、貴志川が流れ、その流域に広がる丘陵地と山地からなっています。同町では、そうした自然環境を大切にしたまちづくりを進めており、満天の星空が観られるみさと天文台やキャンプ場など観光施設が充実。しかし、近年は人口が1万人を割り込むなど(2015年4月現在)、人口減少と少子高齢化が進んでいます。 
 今回取り上げる真国地区は、同町北部に位置し、農業を主な産業とする山間の集落です。同地区においても、2006年に少子化で地域唯一の小学校が廃校になるなど、地域の活力が徐々に失われていました。

3. 取組みの契機

りら創造芸術高等専修学校

 そのような状況の中、廃校を利用して、2007年に1つの学校が開校します。それが『りら創造芸術高等専修学校』(以下、学校)です。男女共学の芸術系高等専修学校として舞台芸術や美術などの創作活動を行っています。同校山上範子校長は自身の教育理念「人と人との結びを大切にする。創作活動による感動体験が子供たちを人として成長させる」を実現できる場所を探し求めていました。そんな中、知人の紹介で訪れた真国地区は、豊かな自然、地域のヒトの結びつきに恵まれた最適な場所でした。

世界民族祭での民族舞踊(中国)

 域外からの参入ということで、当初は地域に溶け込む難しさがあったものの、生徒が卒業制作で、お世話になっている地域への恩返しとして、真国地区の伝統芸能「御田(おんだ)の舞」を復活させたり、地域のお神輿(みこし)に参加するなど地域と積極的に関わるうちに、学校は時間をかけて徐々に地域に根付いてきました。 
 そのような学校の活動は、『世界民族祭』を契機に地域を巻き込んだ大きなものとなっていきます。「芸術、音楽で国境を超えて人をつなげよう」との山上校長の想いから始められた同祭では、世界各国から招いた演者による民族舞踊や日本の伝統芸能等が披露されます。多くの来場客が見込まれる(現在では3,000人以上)同イベントは、学校関係者だけでなく、地域住民などの協力のもと、運営されることになりました。 
 そして、2009年の第1回世界民族祭開催後、その運営グループのメンバーの中から、祭以外にも何か芸術を使ったまちづくり活動を行おうという想いが生まれました。こうして学校関係者、地域住民による『真国芸術の郷プロジェクト』(以下、プロジェクト)が結成され、芸術を中心とした地域おこしが始まりました。

4. 地域としての取組みへ

 プロジェクトでは、メンバーが何度も集まって「この村を芸術でどう盛り上げていこうか」と、熱のこもった話し合いが重ねられました。
 その結果、2012年4月、県の過疎対策事業を利用し、JA倉庫跡に活動の拠点となるコミュニティアートスペース「真国の荘」を整備。オープニングセレモニーでは、学校生徒によるダンス等が披露されました。同施設では、美術展や学校の生徒の作品展示、ミニコンサートなども開催しており、町外からも多くの来場客が訪れるスポットとなっています。

活動拠点「真国の荘」

アートスペースでは作品展などを開催

 また、プロジェクトの活動を、芸術以外の分野にも広げ、地域全体を巻き込んだまちづくりへと発展させるべく、プロジェクトの森谷泰文代表が地域住民からメンバーを集めた地域団体『真国まちづくり会』を立ち上げ、世界民族祭の運営の代表となり、同祭における地域住民の出店や地域のお神輿を演目に取り入れるなどの連携を図り始めました。さらに祭以外でも、前述の県の過疎対策事業の中に、真国まちづくり会による農産品の出荷補助や農業体験イベントを盛り込むなど、活動を広げています。
 このように、学校発のイベントを契機に起こった芸術を中心とした取組みを、様々なまちづくり活動へと波及させることで、地域全体の活性化に繋がっています。

5. 今後の展望

茶屋「雨山の郷」

 今後、プロジェクトでは、真国の荘の更なる改修により、イベント開催だけではなく、地域の産品を並べる店舗や、常設の絵画展示用スペース、カフェの設置を検討するなど、構想が膨らんでいます。 
 真国まちづくり会においても、隣接する志賀野地区との間に、今後両地区で協力して地域おこしを行っていくための活動拠点として、茶屋『雨山の郷』をオープンするなど、地区間で連携して地域活性化を図ろうと動き始めました。 
 なお、これらの活動には全て学校の生徒が関わっています。真国の荘ではダンスなどの発表や作品展示、雨山の郷でもオープニングイベントやパンフレットデザインを担当しています。芸術に関わる活動やそこから派生した取組みが広がり、そこにまた学校が関わっていくという、芸術・学校を中心とした地域おこしが進んでいるのです。
 山上校長は言います。「この地域に全然ゆかりのない生徒が、3年間を真国で過ごし、地域に根差していく。そしてその生徒にとってここが第2のふるさととなり、何かあれば戻ってきてくれる場所になる。そこにプロジェクトや地域の方が合わさって新しい『まち』ができていく」。 
 森谷代表もこう話します。「学校が『芸術』という新しいものを持ってきてくれた。それを地域と融合させ、まちづくりへと活動を波及させていくことが私の役目」。
 学校と地域、やっていることは違っても、目指すところは同じ。お互いが共鳴し合って奏でるハーモニーが、あなたの耳に届く日はそう遠くないのかもしれません。

【関係先リンク:りら創造芸術高等専修学校 http://www.lyra-art.jp/
【関係先リンク:世界民族祭  http://sekaiminzokusai.com/

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